航海レポート

海の上のキャンパス「おしょろ丸5世」の初航海実習に密着!(2)

この記事は北海道大学 高等教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)が運営する「いいね!Hokudai」より転載しました。


今年7月に竣工し、規模も設備も一段とパワーアップした北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸5世」。大学ではさまざまな実習が行われますが、中でもこの練習船おしょろ丸で実施される一般教育演習(フレッシュマンセミナー)は、毎年希望者が定員を上回ります。船上で行われる演習の様子と共に、おしょろ丸5世の魅力をお伝えします。

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 海のフィールドで学ぶ

函館どつくを出港したおしょろ丸。いよいよ約40名の学生の3泊4日の航海が始まりました。船の上で学ぶことは海についてだけではありません。様々な学部の学生が集まっての共同生活やフィールド体験を通した実践を伴うグループワークが待ち受けています。

実際に、おしょろ丸ではどのような実習が行われているのでしょうか。海洋観測やイカ釣り体験、海に生息するプランクトンの観察や、鳥類の目視観測など、海という自然環境を理解するための実習。そして、練習船おしょろ丸を知る実習。そして、練習船「おしょろ丸」を利用するからこそ実現する海上での課題解決型のグループワークや協同作業を通して、コミュニケーション能力を高めます

 約40名の学生が3泊4日の共同生活を送る

天気にも恵まれた午後、おしょろ丸が函館港を出港しました。学生は6班に分かれて4日間グループとして行動します。おしょろ丸を動かす乗組員の方々との対面式を行い、船員の方から船内の各部の説明を受け終わる頃には、すでに陸は見えなくなり、日が暮れてきました。船内での初めての夕食後、実習を統括されている高津哲也さん(水産科学研究院 教授)はにやりとしながら「食後の眠たい時間だからな、睡魔との戦いだぞ」と冗談を交えて夕刻からはじまる講義への忠告を一言。

出港直後、船の窓から見えた函館どつく

出港直後、船の窓から見えた函館どつく

 誰も眠たくならない講義

「イカの前はどっち?」「神経は太い?」「寿命は?」「卵は何個生む?」。山本潤さん(北方生物圏FSC 助教)からテンポよく出されるクイズ。「イカスミは、本当に煙幕のよう(さらさら)なのか?」という質問には、イカ墨が直撃した生物の写真を見せて、「一杯やられた(イカ1杯とかけて)」とセリフをつけると、学生からは笑いが起こりました。普段から食卓で口にするイカ。しかし、私たちはあまりその生態を知りません。気づけば講義の終わる時間。結局、だれもが山本さんとイカの魅力に引き込まれてあっという間に時間が経ちました。

学生食堂と呼ばれる多目的スペースで講義を受けます

学生食堂と呼ばれる多目的スペースで講義を受けます

 イカ釣りに挑戦

夜も深まる時刻。暗闇に浮かぶおしょろ丸の甲板に、長靴、ライフジャケット、ヘルメットを装着した学生達がくり出しました。スーパーに並ぶ捌かれたイカを見ることがあっても、実際にそのイカがどのような場所に生息しているのか、そもそもどんな漁具で釣獲するのか知る機会があったでしょうか。初めてのイカ釣りに胸を躍らせる学生たち。果たして、イカは釣れるのでしょうか。

イカを釣っている様子

イカを釣っている様子

二人一組になり、まず手にしたのは手釣り用のイカ釣り漁具。釣り糸の先端には分銅(おもり)がついており、反対側の先端は釣り糸の長さを調整できるよう糸巻きがあります。分銅と糸巻きの間には、18〜21cm程の擬餌針が、約1.1mごとに釣り糸に用意されています。

手釣り用のイカ釣り漁具

手釣り用のイカ釣り漁具

「シャクリを入れる」とは、擬餌針を餌のように見せるために釣り糸を上下に運動させることです。糸を海中に垂らすだけではイカは釣れにくいので、この「シャクリ」の入れ方がポイントになります。甲板には学生達だけではなく、船員の方々が大勢駆けつけてくださり、賑やかなムード。船員の方にイカ釣りのコツを教えてもらいながら、イカが釣れるのを待ちます。しかし、1ヶ所目の海域ではなかなか釣れず、海域を変えることに。この広い海で、海洋生物がいる場所を探すのは簡単なことではありません。数十分程船を走らせて2ヶ所目の海域に到着しました。

自分で釣ったイカと写真撮影

自分で釣ったイカと写真撮影

だんだんとシャクリを入れる動きにも慣れてきた頃、「釣れた〜!」と大きな声があがりました!獲れたイカは、自分の手で重量・体長・雄雌を計測した後、マキリと呼ばれる包丁で捌きました。ぬるぬると滑るイカの体表を懸命に抑えながら捌き方を教わります。魚も捌いたことがないと言っていた学生も、いざ捌き始めるとその顔は真剣そのものでした。

イカの捌き方を教えてもらいながら自分の手で捌きます

イカの捌き方を教えてもらいながら自分の手で捌きます

 自分で釣ったイカを捌いて食べる

釣ってすぐのイカは透明でツヤツヤしています。スーパーに並んだイカを購入して食べるのではなく、こうして海の命をその場でいただく経験は、学生にとって忘れられないものになったのではないでしょうか。

司厨手の方にイカを刺し身にする際の注意点を教えてもらいます

司厨手の方にイカを刺し身にする際の注意点を教えてもらいます

自分で釣ったイカを干してパックします

自分で釣ったイカを干してパックします

 イカ釣り後の英語によるイカの講義

イカ釣りのあとは、BOWER John Richardさん(水産科学研究院 准教授)の英語によるイカの講義です。船上の実習は、実践だけでは終わりません。実際にイカを測定し、捌いた後は、さらに学びの時間がまっているのです。「イカはサカナですか?」「イカの腹部と頭部はどこ?」「タコの足は8本ですが、イカの足は何本?」知っているようで、答えるには少し自信のない様子の学生も、実際にイカを解剖しながら学びます。

ジョン先生の講義の様子

ジョン先生の講義の様子

一人1杯のイカを解剖します

一人1杯のイカを解剖します

 海に住む、生きたプランクトンを観る

海に住む生物と聞いて一番はじめに思い浮かぶのはなんでしょうか?魚、イルカ、アザラシなどでしょうか。では、魚は何を食べているのでしょうか。肉眼で見えるものから見えないものまで、様々な種類の動物プランクトンが海の生物を支えています。実習では、プランクトンネットを使って採集した動物プランクトンを、生きたまま船内の実験室にて顕微鏡で観察しました。初めて見る形の生物に、驚嘆の声を上げる学生も。図鑑で調べたり、先輩であるTA(ティーチング・アシスタント)に質問したりしながら、初めは船の揺れの中で観察していると気持ち悪いなど言っていた学生も、だんだんと観察に集中していきました。広い海に生息するこの小さな生き物たちとの出会いは、おしょろ丸に乗り、フィールドに出てきたからこそのものです。

プランクトンネットを海中に垂直に沈めて動物プランクトンを採集します

プランクトンネットを海中に垂直に沈めて動物プランクトンを採集します

海のプランクトンについて、TA(ティーチング・アシスタント)に教えてもらいます

海のプランクトンについて、TA(ティーチング・アシスタント)に教えてもらいます

顕微鏡で観察し、見つけたプランクトンや稚魚にチェックをつけます

顕微鏡で観察し、見つけたプランクトンや稚魚にチェックをつけます

 文明の機器から隔離され、目の前の人と過ごす時間を楽しんで

「船の上で携帯の電波をさがさないで。今のこの状況を楽しんで下さい。」おしょろ丸が出港する際の担当教員からのメッセージです。航海がすすむにつれて、携帯の電波が入らなくなっていきます。はじめは食事中も携帯を離さなかった学生が、一人、またひとりと携帯をカバンにしまい始めました。その代わりに増えたのは、初めて会った相手とのたわいもない会話。船上の生活は、日常から少し離れることで、目の前の友人たちと向き合う時間が増える空間なのかもしれません。

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